先日、相方の30歳の誕生日ということで、3泊4日の家族旅行をした。義理の両親、義理兄の家族が一同に集まる大掛かりな旅行。相方へのサプライズということで、どこか家族での思い出の地を探した。エクサンプロバンスの近く、リュベロンにあるホテル、Auberge des Seguins/ウベールジュ・デ・セーガンを選んだ。 ここは相方家族の思い出の地でもあるのだ。
義理母によると、相方が生まれる前に、ここでお母さんがある男の子の名前を呼んでいるのを聞いて、いい名前だなぁと思い、次の子どもにはその名前をつけようと決めたという、相方の起源のような場所。そして、相方が4歳の頃、再び家族で訪れ、義理兄に相方がプールに落とされ、その後放牧していたロバに蹴られて何メートルも飛んだという、男の子ならではのやんちゃエピソードのある場所なのだとか。
エキサンプロバンスで車を借りて、運転すること約1時間。道と言えるのかどうかもわからない山道を通って、Auberge des Seguins/ウベールジュ・デ・セーガンに着く。自然の中にあって、ここは携帯の電波も届かない場所。日頃パリで吸う空気とは違う。澄んだ空気が流れている。それに柔らかな日差しがさしていて、フランスの春だと思えないぐらい暖かい。
義理母曰く、最後に訪れた26年前とほとんど変わっていないという。確かにここの時間の流れは穏やかだ。携帯の電波も届かない場所なので、現代が持つ特有のスピード感はここにはない。ここは独自の時を刻んでいるのであろう。
ホテルの後ろ側には、どのようにしてこのような形になったのか、自然の神秘を感じさせる大きな岩壁がある。それは思わず言葉を失ってしまうほど、美しく、見事な岩壁。聞いた話によると、1980年代にこの岸壁は日本人にロッククライミングの地として人気があったのだとか。
日頃パリの郊外では自然の中ではしゃいだりすることもできない息子が元気いっぱい走り回ることができたのは、良かったことのひとつ。いとこも一緒だったことも大きいけれど、ずーっと駆け回りながら、その嬉しそうな笑顔。私自身「自然より都会が好き」なのだけれど、こういった息子の姿を見ると、時々はこういう環境に息子を置いてやることも大切なのだと痛感する。そういえば私だって、息子の歳の頃は千里の山の中を毎日駆け回っていたっけ。
3泊4日の滞在はあっという間に過ぎた。一日は近くの可愛らしい村を訪れ、他の日は南仏に住む相方の祖母や義理の伯父伯母が集まってくれて、誕生日パーティーをおこなった。30、40などの節目で誕生日を盛大に祝うフランス。相方の家族もこうして集まって、誕生日を祝えたことをすごく喜んでいた。そしてあまり感情を表に出すことのない相方も嬉しそうだった。普段あまりこうした旅行は乗り気でない私も、こうしてみんなの喜ぶ顔が見れて、来た甲斐があったと思ったのだった。