京都の思い出 三味洪庵


フランスの日常の中で、ふっとしたときに、懐かしく思い出されるのは、京都のこと。一年に一度最低三週間は、実家の大阪に帰ってはいるのだけれど、それでも異国の地で日常を重ねていると、日本に居たときのことは、まるで写真のアルバムのように、どこか遠い過去になってしまう。

ときどき、相方と日本の思い出話をする。話題になるのは、京都のことが多い。実家が京都も近いということもあって、日本滞在中はほんとうによく京都に行く。旅行好きの相方だけれど、日本滞在中は、京都に行けるだけでも、満足なよう。というのも、これだけ京都に通っているのだけれど、いつまでたってもまだ京都のことはよく知らないような気がするからだ。それだけ、奥深くて、掴み難い魅力のある街ということか。

前回の滞在では、初めて白川沿いを歩いた。ただ川沿いを歩いたというだけなのに、それも全て特別な思い出。

そして白川沿いにある三味洪庵(さんみこうあん)という、京のおぞよを出すお食事処/喫茶で過ごした時間は、とりわけ温もりとともに、心に思い出される。

その日は、もう春も近いというのに寒かった。それでも、気持ちのいいお天気の日で、曇り空の多いフランスに住む私たちにとって、春の訪れの喜びが感じさせられる日だった。以前、インターネットで見て、気になっていた三味洪庵というお食事処が近くにあるということで、行ってみることにした。京町家の暖簾を潜り、喫茶室に案内されると、ヒーターの温もりが感じられた。外の寒さで真っ赤になった頬に温もりが伝う。

喫茶が始まった時間帯だったからか、お客は私たち二人だけだった。窓側に席を取り、白川の眺めを独り占めするという、贅沢さにありついた。春を感じさせる光が白川の水面を照らし出し、美しい。

抹茶のロールケーキやコーヒー、抹茶のカプチーノなどを注文し、無言のまま二人して、外の景色を眺めて過ごす。こうやって川を眺めるだけでも、風情があるように感じられるのは、やはり京ならではの魅力か。気持ちが無になるのを感じながら、ゆったりとした気持ちのいいひとときを過ごす。

お会計のとき、お店の方に、外に案内して頂いた。天気がよくて温かい日は、外でお食事もできるとのこと。夏前には蛍をみることができて、そして秋は渋柿の実がなり、その景色はとても風情があると、教えて頂いた。次回は必ず、外で食事をしようと決める。

お店をあとにして、電車のある四条河原町まで歩いた。ふと振り返ると、虹が白川を覆い被せるようにかかっていた。その特別な美しさに、相方はシャッターを何枚も切る。虹を京都で見たのは初めてだった。何度も訪れている京都の思い出の中でも、色濃く記憶に残る一日となった。

三味洪庵

http://sanmikouan.jp

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