【パリ】モンマルトル美術館のカフェCafé Renoir


街に行くと必ずカフェには行きたい。たとえ買い物に出かけるだけであっても、カフェに行かないとなんだか「ただ用があって来ただけ」という味気ない気分になってしまうからだ。私にとってカフェは日常の中に非日常をもたらせてくれるようで、その二極間を繋いでくれる空間なのだ。この頃は特に慌ただしい日常で、毎日がびっくりするほどの速さで過ぎ去っていく。少しぼーっとした時間を持ちたかった。なので、この間、モンマルトル美術館に行った時も、やはりカフェに行くのを楽しみにしていた。あまり時間がなかったので、その日は、美術館内にあるカフェで休憩をとった。

 美術館にあるカフェは実はあまり期待していないので、滅多に美術館で休憩することはない。単に入場者が足を休める空間のようで、雰囲気も食べ物もイマイチなところが多いからだ。しかし、モンマルトル美術館のカフェは前回訪れたときから気になっていた。日差しの柔らかい初夏の平日に、静かで美しい美術館の庭で、お茶をすることができるのがとても素敵なことのように見えたからだ。それはまるで田舎の別荘でゆったりとしたひとときを過ごしているような、そんな優雅な雰囲気がそこにはあった。

今回は冬なので誰もテラス席には座っていない。いくら久々の晴れ間の広がるパリとはいえ、5度を切る寒さの中では、やはり室内の温かな空間でゆったりとしたいものだ。私は、展示会を見終わった後カフェに入った。すでに展示会を見終わった何組かのお客さんが席を取っていた。

店内は、天井も壁もガラス張りになっていて、光が惜しみなく注ぐ、明るい空間。緑の壁も、この美しい庭と一体となっているようで、室内であっても、庭の存在が感じられる。まるで、庭でお茶をしているようなそんな錯覚に陥りそうなほどだ。

私は、ショコラショーとレモンタルトを注文した。ショコラショーはいくつも種類があって、私はシナモン入りのものを頼んだ。シナモンとショコラショーはとても合う組み合わせ。レモンタルトは、フランスのガトーらしく、お砂糖の甘みがたっぷり感じられるものだったけれど、少し疲れていたので、今回はこの甘さも程よいように思われた。

カフェでは、何も考えず庭を眺めながら、単に時を過ごした。実はというと、連日どんよりとしたパリの曇り空で少し心が萎えていた。ここから眺める青空、美しい庭、そしてパリの下町の景色は、そんな憂鬱な心を一気にかき消してくれた。なんだか、「また今日から頑張ろう」と、単純だけれど、パワーをいただいた、そんな素敵なカフェでの午後だった。

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