【パリ】心地の良いカフェ Le verre à Pied 


ヘミングウェイの「移動祝祭日」にも出てくるムフタール通りにあるLe verre à Pied/ル・ヴェール・ア・ピエというカフェを始めて訪れたのは今からもう5年以上前のこと。当時子どものいなかった私たちは、毎週レストランに出かけるのが二人の習慣だった。良くも悪くも名前が知られている、ムフタール通りで一度ごはんを食べてみようとこの通りで待ち合わせをした。当時仕事が早めに終わる私は、どこかのカフェでビールでも飲みながら本でも読んで相方を待っていようと思い、待ち合わせの1時間以上前に、ムフタール通りに着いた。

ムフタール通りが良くも悪くも名前が知られた通りと書いたのは、フランスの童謡にも出てくる古い通りなのだけれど、ヘミングウェイの時代からこの通りは、安いレストランが集まり、決して質のいいものを食べれる場所ではない。現在も学生向けのびっくりするような安いレストランやバーが集まり、連日学生たちによるお祭り騒ぎと行った様相である。そんな通りでどこかいいカフェはないかと探していたところ、Le verre à Piedというカフェが目に入った。

シンプルだし、何と言っても私がイメージする昔のパリのカフェを彷彿させる !一目で内装も気に入り、このカフェに入ることにした。その日はコートに、マフラー手袋としっかり防寒しなければならないほど、冬の始まりが感じられた11月下旬。外で冷えた身体に温もりが優しく包んでくれるのが感じられるほど、店内の暖かさが染みた。

私はカフェ全体が見渡せる奥の方に座った。音楽もかかってないし、カウンターでワインやビール、コーヒーを飲む人たちも、大声では話していない。うるさ過ぎもしないし、静か過ぎもしない空間。店内は鏡で覆われている。鏡張りのカフェはギラギラしたしがちだけど、少し錆びた鏡に、黄色のライトが反射をして、温かさがこだまするような空間となっている。私は、席に着くなり、このカフェが好きになった。

この日以降、自分のアパートからアクセスが決してよくないにも関わらず、年に何回かひとりの時間ができるとLe verre à Piedを訪れている。ただこのカフェでは一人で本を読んだり、ビールやワインを飲みながら、無心でぼーっと過ごしている。日頃の入り乱れた感情がなんとなくリセットされるような気がするからだ。私にとって、肯定も否定もないニュートラルな空間なのだ。

それにここに来るお客の人間模様を観察するのも、映画を見ているようで興味深い。Le verre à Piedは映画で見るような小綺麗な服を着た近所に住む常連のマダムや大学の教授など、富裕層やインテリだけでなく、近くの工事現場で作業をしている労働階級の人々も訪れるカフェ。そういった人たちが話す内容を聞いていると、自分とは違う世界の人々の人生の一部を垣間見ているような気になるからだ。

Le verre à Piedが映画「アメリ」の中に出てくるカフェと知ったのは最近のこと。モンマルトルのアメリの働くカフェ、Café des 2 Moulins/カフェ・デ・ドゥ・ムーランではなく、アパートで少年のおもちゃを見つけたアメリが、かつての持ち主に返すことに成功をし、その持ち主を追ってカフェに入ってくるシーンで使われている。大好きなカフェが映画「アメリ」のロケ地として使われていることが嬉しく思った。

Le verre à Piedのことを書いていると、無性にこの空間に身を置きたくなる。前回春前に訪れて以来、まだ行けてない。時々このカフェが恋しいくなるのだ。

Le verre à Pied

118 bis, rue Mouffetard 75005 Paris

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