ロンドンバスにまつわるエトセトラ


ロンドンバスを見ると、心が浮き立つ。赤い二階建てのレトロなバスは、子どもだけじゃなくて、大人をも惹きつける魅力があるように思う。その形、または色に惹かれるのか。ロンドンバスは、ロンドンのシンボルとして、長い間君臨し、この街を魅力的に彩る存在となっている。

昨年のロンドン旅行でも、息子が一番楽しかったことは、「ロンドンバスに乗ったこと」だった。二階の一番前の席に座り、ロンドンの街を見渡した。特等席で、何かの映画でも見ているかのように、真剣にロンドンの街を見ていた。その目は、キラキラとしていて、新しい世界を発見したかのようだった。旅行中、何度もロンドンバスに乗りたいとせがまれ、最後には困ったほどだった。

そういえば、ロンドンバスは日本にも来たことがあるらしい。というのも、小さいときにロンドンバスに乗りに行った時の写真があるからだ。記憶の糸を探っていくと、ロンドンバスの中に入り、そしてバスの前で写真を撮ったように思う。一緒にロンドンバスを見に行った祖母がロンドンに行ったことがあったので、その時に話してくれたのか、子供心にも、ロンドンバスは特別な乗り物として私の心の中に刻み込まれていった。

ロンドンバスに実際に乗ったのは、それから約20年後のことだった。友人がイギリスに留学するタイミングで、ロンドンで落ち合った。旅行最終日、フランスに帰るまで一人の時間があった。何を思ったのか、ロンドンバスに乗って、終点まで行ってみようと決めた。小さな冒険。そして、ノッティングヒル方面のバスに乗り込んだ。二階の一番前の席に座り、自分が知らないところに行けると、胸が膨らんだ。

ノッティングヒルの美しい街並みが次々と目に入って行った。そして、桜の木の枝にロンドンバスがかすかに当たり、目の前でピンク色の桜の花が見えた。随分日本から遠いロンドンの街で桜に出会ったことに感動をした。自分の人生の中で、毎年当たり前にあった日本の桜。かれこれ一年以上も日本に帰っていない。郷愁の想いに駆られた。

そうこうしているうちに、ノッティングヒルの街を通り過ぎ、郊外の街並みは私が想像し  ていたものとは違うものになっていった。ヨーロッパでは、郊外には歴史的な美しい街並みはなく、ただただ無機質な建物が立ち並ぶ。目に映る景色が色褪せて見えていった。冒険心は失われて、次の停車駅で降りて、ロンドンの中心部に戻ろうと決めた。

その時からこの街には縁があるようで、何度も旅行でロンドンを訪れている。ユーロスターの止まるセント・パンクラス駅から地下鉄に乗り、地上に上がった時、ロンドンバスが走っているのを目にする「ロンドンに来たんだ!」と、一瞬で心が高鳴る。ロンドンバスはときめく心を誘ってくれる。そう、まるでマジックのように。

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